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2012年7月 9日 (月)

フォーカルジストニアの克服?!

出張レッスン先でたまたま見つけた
読売新聞の夕刊に
ピアニストの方で「フォーカル・ジストニア」を克服し
その病を発症していない左手だけでピアノを弾いて
見事にオーストリアの音大の合格した記事が載っていた。

Photo_2 

「音楽家のフォーカル・ジストニア」は
正確に表現すると
意志に反して「筋肉が収縮、硬直する病気」ではない。
そんなに大げさなことではなく、なんとも繊細な症状から始まる。

まず最初は指が単に巻き込んだり、跳ね上がったりするだけで、
どこか別のところの筋肉の収縮や硬直を伴うわけではない。
(確かにフォーカル・ジストニアの人に、
肩こりが激しいなどの症状がある人も多いかもしれないが、
それとこの病気は直接には関係ない。)
しかもピアノを弾いている時にだけ、時々に起こる。。。
日によってそうならない時もある。
さらに初期の段階では、ただ「むずむずする」など、
ちょっとだけ「違和感」があるだけだ。
もちろん、他の日常生活では何も異常は起こらない。

その段階で、なにか精神的に焦ることがあったり、
無理を強いる必要(か自分の欲求?!)が重なって、
その「からだからの信号」を無視し続けて、
脳の指令の通りにしようとする
(長時間練習する)ことが
ある期間以上続くと、ついに「からだは反乱」を起こして
言うことをきかなくなる。

この段階で起こるのが、指が巻き込んだり、
その巻き込みをやめようとすると、今度は隣の指が跳ね上がる
そういう「からだの反応」が「脳の指令」(=自分の意思)に反して起こる。

整形外科や脳神経外科のお医者様は
この最終的な症状しか見ないし、
別に命にかかわる病気ではないから
少々指が巻き込んだぐらいで。。。というように
思う方もあるようだ。

あるギタリストの方なんかはいくら不調を訴えても、
「普通の人より、指はよく動きますね」
と逆に言われ(確かにギタリストなんだから、
一般の人より指はよく動くのは当たり前だ)
全く取り合ってもらえなかったと困っていた。

なかなか診断をしてもらえなかったり、
(診断してもらえるから、先に進めることもあると思う)
単に原因不明と言われ、筋肉の硬直を少なくなる薬や
精神安定剤みたいなものを処方され、
あるいは単に精神的なストレスとして片づけられることもある。

しかし、プロの演奏家にとっては、
なんとも致命的な違和感であると言わざるを得ない。
自分の思うように指が動かない、
いつどこでどうなるのかわからない、コントロールできない
ということは大変なことだ。
その不安や焦りはいかほどのものだろうか。

こぶくろがジストニアで休業することになったので、
「フォーカル・ジストニア」という病名を聞かれた方もあるだろう。
声帯にもジストニアはあるのだ。


さて、フォーカル・ジストニアになって
それを治そうと研究していく過程で、
その症状を改善させる多くのエクササイズを考案し、
改善のためのベースとなる考えをまとめた
のはスペインのホアキン・ファリアスだ。

彼の方法は「治療」ではなく「教育」で、
しかも無理なことをするのではなく
「からだの声をきき」「まかせ」
脳(自分・意識・自我)とからだ(自然)のバランスを
「元に戻そう」という考え方だ。
からだのパーツにはどこにも病巣があるわけではなく、
接続においての「不具合」なのだ。

だから「克服」「征服」するのではない。
「元に戻す」のだ。

そういった意味で、「音楽家のフォーカル・ジストニア」
(=職業性ジストニア)は
「病気」(?と、もし名づけるのなら)の中でも、
かなり変わったタイプであると言えるだろう。
そこには戦いや頑張りはなく、調和がある。

「難病」ではないと私は思っている。
改善できる病気だと思う。
ファリアスのワークを見ていると
いつもそう思う。
(私には通訳でレッスンに同行する機会があった。)

そしてそこから、この病気ではない人も
学ぶことが多いと私は感じている。

こんなテクノロジーがなんでも進んだ時代になったからこそ、
自然でいることが難しくなっている。
外から何か付け加える前に
本来、私たちが持っているものへと立ち返り、
調和するということが、
私たちの内部にも外部の自然にも必要だし、
地味だが時には
最も大きな力を発揮する方法ではないだろうか。



ホアキン・ファリアス博士のウェブはこちら
http://www.focaldystonia.net/

8月の来日が延期になった。
来春の来日に期待したい。

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