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2012年8月31日 (金)

あなたの演奏、少し上手すぎたのではないですか?

以前、ご紹介したスーザン・トムズ著
「静けさの中から~ピアニストの四季~」(春秋社)
の中に、

終演後、レセプションの席で、一人の男性が
「たいへんすばらしい演奏でした」と声をかけてきた。
ところが私のすぐ近くまで来ると、彼は声をひそめてこう言ったのだ。
「でも、ちょっと伺いたいのですがね?
あなた方の演奏、少し上手すぎたのではないか、と思うのです。」

と言われた書かれてある。

そして、

それってどう意味でしょう?

と続く。


ベートーヴェンの時代は、室内楽なら誰かの家の居間か応接室で
リハーサルは最小限しか行わず、
しかもプロ奏者とアマチュア奏者の混成で、
楽器を操る技術の個人差が大きかったことがわかっているという。


そうなのか!


ということは現代の方がずっと演奏レベルは高いことになる。

しかし、現代の方が完璧だけれど神経質な演奏で
聴いている人は「くたびれる」ことが多いのではないか??
私はこの個所を読んでいる時、とっさにそう思った。

そして音楽とは本来、そのような「リラックス」の中で
音楽することが大切で、つまり音楽を愉しみつつ、
その中で技術が向上したのではないかと思う。
少なくとも今のような教育システムではない。

そうなのか、ベートーヴェンの時代は
優れた演奏家がいなかったわけではないが、
現代の演奏家のような長時間に及ぶ練習も行われなかったのなら
技術的なレベルは当然、そんなによくなかったのだ。

なのに、なぜだか確信するのは
ベートヴェンの時代の方が演奏家にも聴衆にも
もっと「音楽をする」ことの本質がわかっていたような気がする。



何だか技術的なレベルがよくなかったと聞いて
安心している自分がいる。
そして、私ももっと音楽ができるような気がしてきた。

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